睡眠リズムの生理学
実験的に体内時計の所在を探すのにラットがよく使われます。
ラットはヒトと異なり、昼間不活発となり、夜間活動的となる夜光性の動物ですが、自発運動などの行動にはっきりしたサーカディアン・リズムがみられるからです。
回転ドラムを使ってラットのサーカディアン・リズムを記録する方法を示してあります。
このラットの脳のいろいろな部位を破壊してみると、サーカディアン・リズムを消失させるのは、視床下部を破壊したときのみです。
最近になって視床下部のなかでも、視交叉上核だけを破壊すると、水飲み行動、車回し行動、睡眠・覚醒リズムなどラットのいろいろな行動のサーカディアン・リズムが消失することが明らかにされました。
ヒトの第三脳室の腫瘍でもおそらく視交叉上核が破壊されているのでしょう。
視交叉上核が体内時計の座であるとすると、ここには網膜から直接の神経連絡があるので、視交叉上核の体内時計は目から入る光によって明暗サイクルに同調させられることが考えられます。
これで、25時間の内在リズムが24時間になるしくみもよく理解できるでしょう。
しかし、ヒトの揚合、最も強力な同調因子は光刺激ではなくて、社会的刺激(周りの人の動きや騒音、他人との接触、新聞やテレビ、家庭生活など)であるといわれています。
動物とちがってヒトでは大脳皮質が非常に発達しています。
高等な精神機能をもつヒトの揚合には、光よりも自分の意思とか社会環境が大きな役割を持っているはずです。
これには能生理学的な裏づけがあるのです。
覚醒を維持する働きをもつ中脳網様体は感覚神経からの入力ばかりではなく、大脳皮質からの入力があることが示されています。
これが寝食を忘れるほどに夢中になれることの生理学的な基礎です。